明日は明日の風が吹く
作:ORE
第1
話〜『志貴君争奪戦』前夜〜
空が茜色に染まりつつある頃、俺はやっと自分の家にたどり着く事ができた。
道中、秋葉から感じる殺気めいたモノに反応しちゃったりする七夜を抑えたりで物凄い疲れた。。。
相変わらずでかい家だ、いつも思うのだが俺みたいな庶民チックな男が入っていっても問題ないのだろうか・・・。
重たい門を開けた先には琥珀さんがホウキを手に庭を掃除していた所だった、琥珀さんは俺たちが帰ってきたの知ると掃除を中断して
こちらに寄ってくる。
「おかえりなさいませ、志貴さん、秋葉さま」
「ただいま、琥珀さん」
「お荷物お持ちしましょうか?」
「いや、自分の分は自分で何とかしたいし琥珀さんは自分の仕事を続けて良いよ」
琥珀さんの申し出をやんわりと断り、俺は家の中へ入る。
今度は翡翠がやってくる。
「おかえりなさいませ、志貴様、秋葉様」
ふかぶか〜っと頭を下げて出迎えてくれる。
「相変わらず翡翠はかしこまりすぎだな」
「さようでございますか?私は普通に接しているつもりではありますが」
「昔みたいに志貴ちゃんって言って欲しいな〜・・・」
と、俺がからかうように言ったら翡翠は顔を真っ赤に染めてうつむいた。
「兄ぃさぁん?」
俺の背後から危うい殺気を感じた、他人がこんな殺気を向けられたらショック死してしまうんじゃないだろうか?
俺は恐る恐る、背後に居る大魔神と向き合ったなんというか、大魔神というよりは鬼女だろうか・・・。
「な、なんだ?秋葉」
「兄さんは人に何か言うときは何時も何時もそんな言葉を発しているんですか?」
イカン、なんか弁解の余地すらくれ無さそうだぞ? この秋葉の目は・・・。
「翡翠、貴方は仕事に戻りなさい。兄さんはこれから私の部屋でゆっくりとお話をしてあげますわ・・・」
オーマイガッ!
学校の出来事と良い家に帰ってきてからと良い
今日は仏滅か!?
「で、では私はこれで失礼します・・・」
秋葉の怒気に恐れたか翡翠は申し訳無さそうな目で俺を見ると一礼をしてこの場を去った。あぁ秋葉にも
あんな目をしてくれるくらいの可愛さがあれば・・・。
「さぁ、行きましょうか。
に・い・さ・ん?
」
ところで秋葉よ・・・怖くて口に出せないのだが。
何故、俺を部屋に連れて行き説教をするという事で
口からよだれをたらしている!?
こいつにそんな悪癖あるんですか?
WHYもしかして女王様プレイ
?
あぁ・・・皆・・・。俺どうやらお婿にすらいけない身体にされてしまうかも知れない・・・。
『ズ〜ルズ〜ル───』
首根っこ掴んだまま引きずられている俺は既に人権すら無いのかも知れない・・・ってか遠野家って
治外法権
だったけ・・・。
あぁあーぱー吸血姫でもカレー狂のシスターでもどっちでも良いから俺を助けてくれ・・・。
真剣に願っている俺に神様が気まぐれを起こしてくれたのか。俺は思ってもいなかった人によって救助される。
「御免・・・」
急に秋葉の目の前に現れたのは───。
割烹着の悪魔、人はそう彼女を呼んでいる。
琥珀さんはなにやら着物の袖の中から手を出したかと思うと、十中八九
「
遠野家栽培
」
の薬草で作った睡眠薬〜だと思われる
物を染み込ませた布を秋葉の口元に押し当てた。
何時も思うんですが、貴方様は何時もそんな物騒なブツを懐にしまっているんですか?
「秋葉さま〜駄目ですよ〜ムリヤリ二人っきりになれる口実作って既成事実を諮ろうとしたって
私の目が黒い間は好きなことはさせませんよ〜♪」
にぱ〜っと笑って昏倒している秋葉に囁く琥珀さん・・・風の噂で聞いた事だが遠野家には黒幕が潜んでいると・・・。
絶対この人だ・・・。
「あぶなかったですね〜志貴さん。翡翠ちゃんが教えてくれるのがもう少し遅かったら流石に危険でした」
琥珀さんの後ろから翡翠が現れる。
「大丈夫でしたか?志貴様」
「あ、あぁ・・・それより秋葉は大丈夫なのか?」
俺の足元では秋葉がなにやらイヤラスィ笑顔・・・を浮かべている。
身体は大丈夫そうだが、頭が逝ってしまっているかもしれないなこれは・・・。
「大丈夫ですよ〜、秋葉さまには少しの間幸せな夢をみていただいているだけですので〜」
なにやら秋葉が寝言でも言ってるのかも知れないが───。
「ふふふ・・・あぁ兄さんのピーーーが○○○で───」
なんて言うすっげぇヤバイ放送禁止用語交じりの寝言は聞こえない事にしておくっていうか幸せな夢なのか?これが
あぁ・・・あの俺が居なかった空白の8年間はお前をここまで換えてしまったんだな〜お兄ちゃん涙出てきたよ・・・。
さて・・・こうやって策士琥珀さんの活躍によって俺は無事に(大切な物を失った気がするが)救助された。
俺が何か礼をしたいと進言したのだが、彼女達姉妹は。
「いえいえ〜私達は志貴さまに何かしていただきて助けたわけではございませんので〜」
「侍女として、主人をお守りする事は当然の事です」
とやんわりと断られてしまった。
が・・・なんで二人とも殺気って言うか色気を出してるんですか?
もしかしてまだ悪夢終わってない?
っていうか、俺の微かながらに平和だった昨日までの世界は何処へ行ったのだ?
この後・・・俺は数時間に渡り逃走劇を繰り広げた・・・。
暗い暗闇の中・・・和室の一室で彼は膝を抱えて震えていた。
「僕・・・もうつかれたよ・・・」
やばいぐらいに幼児退行している志貴であった。。。。
一方その頃───。
満月が空に浮かぶ深夜、アルクェイドのマンション。
「うにゃ〜・・・志貴をなんとしてでも手に入れるにゃ〜」
テレビをみながら彼女はそんな事を口走っていた。
みているテレビは『生徒と先生の禁断の愛』なんとまぁエグイタイトルであろうか。
ブラウン管の中の生徒(男)と先生(女)が午後の茜色に染まった放課後の教室に二人向かい合わせに立っていた。
『先生・・・俺・・・俺・・・』
『貴方の想いはわかっているわ・・・私も貴方のことが・・・』
そしては二人は強く抱きしめあう・・・。
「う〜ん・・・こういう展開に持ち込まなければ・・・」
すっげぇ真面目な顔をしてテレビの展開を見つめているアルクェイド・・・彼女が本当に800年の月日を死徒狩りに
費やしたといわれる吸血姫なのであろうか・・・。
そして、さらに所変わってこちらはシエルが住んでいるマンションの一室。
「う〜む・・・何とかして遠野君をあのあーぱー吸血姫から死守しなければ」
カレー片手
に彼女は真剣な目つきで考えていた。
「そうだわ・・・遠野君に調理実習の補習授業を受けてもらうって言うのはどうだろうか・・・」
彼女の頭の中では放課後(またかよ)の調理室の中二人でカレーを作っている場面が映し出される。
「多分・・・強く反対されるかもしれませんが・・・嫌がる遠野君というのもまた一興・・・」
はてさて・・・彼女の宿敵もさることながら。
彼女も埋葬機関『教会』の第七位の弓のシエルと呼ばれる存在である事を誰が認識できるであろうか・・・。
運命は常に過酷に回り続ける。
今回、運命の輪に立たされた青年───遠野志貴は現在
離れの別室で指咥えてるぐらいまで幼児退行してしまっていた。
〜了〜
あとがき・・・
もうLIQをUPして二日ぐらい経ってるんですが。
LIQは真面目さを追求するあまり話が長くなってしまったんですが。
明日風〜はなんていうか
馬鹿話にしてしまったがために収拾がつかなくなってしまってとことん話が短くなってしまっていますw
次回予告はしません・・・w
とりあえず言える事は
腐女子二人+αによって危険に晒された志貴君は
これからも更なる苦境にはまっていく〜って
設定にしてみましょうw
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